福8堂の日本蜜蜂との付き合い方

僕がこれまで(2016年春〜2021年5月現在。巣箱の設置数183箱、観察した蜂群300以上、採蜜した数80群以上)蜜蜂達との付き合いで何度も失敗を繰り返し経験した事を、何度やってもうまく行かないって方や、これから初める方に少しでも参考になればと思い、見聞録として記しています。

入居率よりも定着率

空き家だった巣箱に蜜蜂が入居し、そこへ蜜蜂が集めた成果物がはちみつです。
巣箱に入居しても、蜜蜂が住み続けてくれなければ、はちみつを集める事はありません。
入居率を上げる事はもちろんですが、その後の定着率を保っていなければ成果は出ません。

キンリョウヘンや誘引材、分蜂球捕獲をすれば入居率を簡単に上げる事は可能かも知れませんが、、、
ここでは入居後の定着率を向上させる事に特化した事をまとめていきます。

毎年春になると、「今年は何群捕った!」や、「何群入った!」と蜜蜂を飼育する人達の声を聞きます。
10箱中10箱全部に入ったと大喜びのAさん、秋になると2箱しか蜂蜜が採れなかったとガックリ!!
春には沢山いた蜜蜂が梅雨に半減、夏に半減。結局定着して採蜜できたのは2割。

福8堂の設置する巣箱に入居した群の定着率は7割以上、採蜜可能な群に成長するのは天候によりますが約5割となかなかの成績です。

はちみつを採るのが目的なら、定着率をあげましょう。

持続的に日本蜜蜂から蜂蜜を分けてもらうには、蜜蜂が自ら住み長く定着してくれるような場所に巣箱を設置して、定着してくれる付き合いを心がけましょう。

設置方法

分蜂球の捕獲→蜜蜂が気に入ってくれそうな所に巣箱を置くだけ。

はちみつ農家となった2016年春、師匠の巣箱から分蜂し蜂球となった群を僕の巣箱に取り込み捕獲しました。

かなり手荒な手法ですので、巣箱と設置した場所の環境が気に入らなければどこかへ逃げてしまいます。

自宅に持ち帰り、よかれと思った場所に設置した巣箱の前で蜜蜂を放すと、ゾロゾロと箱内に入ったので大喜するもつかの間、みるみるうちに弱体化し2ヶ月ほどたった頃にはすっからかんになってしまいました。

勿論失敗ばかりではなく、成功した事もあります。
これまで何度も分蜂球の捕獲に挑戦し色んな方法を試してきましたが、巣箱を設置しただけの完全自然入居の群と比較すると分蜂球捕獲をした群の定着率は長い目で見ると低く、何よりも蜜蜂が望んでいない事だと考えるに至り現在捕獲は全くやらなくなりました。

(春から夏にかけ一般の方から沢山の分蜂球の保護依頼をいただきますが、「ほっときましょう!そのうちどこかへ飛んでいきます♪悪いこともしませんよ。」と伝えています。

中にはアレルギーのある方や店舗、公共施設といった時にはよろしく保護する場合もあります。)

そういったスタイルで日本蜜蜂と接していますが、福8堂の設置する巣箱にはたくさんの日本蜜蜂が永く住んでいます。

福8堂は設置した巣箱へ自然にみつばちが住みついてくれるのを待つだけです。

経験上、みつばちが入居を選ぶ条件

  • 巣箱の設置場所 7割
  • 巣箱の形状や材質 1割
  • その他 2割

もしかしたら8割以上が設置場所かもしれません。それくらい設置する場所が重要です。

みつばちにとって最良の設置環境に巣箱を設置できれば、定着率が上がり持続的にはちみつをわけてもらえます♪

設置場所について詳しくはこちら

誘引について→蜜蜂が気に入ってくれそうな所に巣箱を置くだけ。

結論
誘引剤を使わないと入居してくれない場所=何度やっても成果の上がらない場所

通称誘引ランと呼ばれるシンビジュームの一種。(キンリョウヘン、ミスマフェット、デボニアナム)や誘引剤(ミツバチルアー)の使用は基本的にやりません。(研究の為に使用したりする事はあります。)

僕もミツバチ蘭や誘引剤を使用して蜜蜂群を捕まえた事は何度もあります。

因みにミツバチ蘭や誘引剤は絶大です!!

しかし蜜蜂達は入居後巣箱の設置環境が気に入り選んだのではなく、誘引剤に誘引され、そこを選んだ為に、時間が経ち「こんなはずじゃなかった!」と引っ越しをしてしまう事も多く、誘引剤を使用することにより一時的に群を増やす事ができても、目的の蜂蜜を分けてもらうには、巣箱を設置しただけの完全自然入居の群と比較すると誘引捕獲をした群の定着率は薄いので費用対効果を考慮すると僕には使う必要が無いと判断して現在は使用していません。

とはいっても最初から蜜蜂が気に入る場所を知ってる訳ではないので、誘引剤を”狼煙”として使用するのであればとても有効だと考えています。 

ただし誘引剤に頼っていては、いつまでたっても蜜蜂の気持ちは分からず、蜜蜂達が本当に気に入り長く住んでくれる場所を知ることはできません。

因みに今は蜜蜂が気に入ってくれる場所を何十ヶ所も蜜蜂達に教えてもらったので、誘引剤を使う必要がありません。
もし今使えば「竜に翼を得たる如し」と言っても過言ではないほど捕獲出来てしまうかもしれません。
自慢ではなくそれくらい効果があるという事です。

誘引剤を使用した場合に蜜蜂が入居を選ぶ条件

誘引材使用

  • 巣箱の設置場所 7割  →3割
  • 巣箱の形状や材質 1割 →1割
  • その他 2割     →1割
  • キンリョウヘンや誘引剤 5割

上記のようにキンリョウヘンや誘引剤の効果は絶大です。

しかし誘引剤の使用や捕獲した群が長く住んでくれなかったり、はちみつをたくさん集めていなかったり、越冬ができない。という事が何度も続く場合は設置環境を見直す必要があります。

持続的にはちみつを分けてもらう事が目的の方は、自然に入居してくれる場所を見つける事が1番重要です。

自宅でどうしてもみつばちが飼いたいといった方も多いと思いますが、何度やっても定着率が上がらない場合は、設置場所の環境を変えることで上手く行くこともあるかもしれません。

設置場所について詳しくはこちら

巣箱の移動→家は定置

巣箱の移動はやりません。

誘引剤を使い誘引捕獲して、分蜂球を巣箱に取込み日本蜜蜂の巣箱を何十回も移動させた経験があります。

移動先を蜜蜂が気に入ってくれる所ならまだよいかもしれませんが、そんな場所があれば移動の必要はなく、最初からそこに巣箱を置けば入居してくれますよね。

巣箱を移動させ目的のはちみつを分けてもらうまでに至らない事を何度も経験しました。

はちみつ農家1年目の春に衝撃的な出会いがあり、それが今の考え方になった要因の1つかもしれません。

自宅の敷地内で日本蜜蜂を20群以上を飼育する方に話を聞いた事があります。

その方は春に誘引剤とキンリョウヘンを使い分蜂球捕獲をして毎年15〜25群を捕まえ、全て自宅の敷地へ移動するそうです。
逃蜂を防ぐ為、女王蜂が出られないよう出口を狭めるようです。
群は梅雨あけに半減、夏に半減し、秋に半減、更に採蜜時期はどの群も貯蜜がなく、砂糖水を与え越冬に備えるも次世代に繋げられた経験はほぼ無い。と言っていました。

それだけ密集飼いをすれば、蜜源不足や病気、蜜蜂に近親交配は無いと言われていますが、ストレスにより何かしら起こるでしょう。

ただその方は、家の周りに設置した巣箱から蜜蜂が出入りしている姿を見るのが楽しみで仕方ない。と、自分も蜜蜂も冬は外に出ないし、蜂はなんぼでもいるのだから、また捕まえれば良い!と言っていて、人それぞれ考えがありますが、あまりの勝手さに呆れてしまいました。
が、その方は、敷地内や近辺に蜜源になる色々な種類の木をとてつもなく沢山植えていたのがせめてもの救いでした。

追伸
僕もやむを得ない場合は巣箱の移動をすることがあります。(土地所有者に移動を求められるなど)

設置場所について詳しくはこちら

底板掃除→家政父ですね

底板掃除は一切必要無いと考えています。
※蜜蜂の出入り口が四方出入り口巣箱の場合。

大家さんが頻繁に、しかも頼んでもいないのに勝手に玄関を掃除していたらどうですか?
因みに うちの妻は「え〜掃除してくれるなんて助かる~♪」なんて言うタイプですが、、、笑
僕なら真剣に引っ越しを考えると思います。

巣箱の底板に貯まった巣屑にスムシが繁殖するのを嫌い底板を掃除するという人が多いようですが、底板の掃除は全く必要の無い事だと確信しています。
よかれと思い巣箱内を掃除することは蜜蜂にとってストレス以外なんでもないと考えています。
スムシについて詳しくはこちら

下記画像は蜜蜂が入居後一度も掃除をした事のない底板です。

厚みが6mm〜8mmの下駄を巣箱と底板の間に入れることで隙間ができ、四方から蜜蜂が出入りできます。

下駄の部分にたまった巣屑はウスグロツズリガの幼虫が食べてくれるので底板は綺麗です。


四方出入り口のメリット

  • 風通し抜群
  • 蜜蜂が外出次いでに掃除しやすい
  • 四方どこからでも出入りできるので外敵から狙い撃ちされにくい
  • 巣屑のたまりやすい四隅がない
  • 枝や石などでも代用可


・デメリットがない

この四方出入り口状態は冬に冷気が吹き込むと言う方がいますが、蜜蜂は秋になると出入り口以外を不要な巣を噛み砕いた巣屑で塞ぎます。

寒い時期は、スムシやウスグロツズリガが繁殖することも無く、暖かくなると羽根で巣屑を吹き飛ばし風通しをよくしています。

日本蜜蜂は野生の蜜蜂です。

厳しい自然の中、人間よりも長い歴史を生き抜いてきた逞しい生物です。

過保護に手を貸すことにより、本来もった自己防衛力やストレスにより抵抗力と免疫力も低下するでしょう。

福8堂は手を貸すことはせず、見守るだけに徹しています。

 

巣箱の内見→覗きの趣味は無いです

最初は毎日のようにやっていました!!

日に日に巣が成長するのを見るのは楽しいし、間違いなく群の状況把握ができます。

しかし

異変を知った所で何か対策しても、その場しのぎで根本的な改善にはなりません。

そして定着率を下げる原因の一つと考えています。

とはいえ僕も観察してわかった事や気づいた事がたくさんあり、そのおかげで今は巣箱内を覗かなくても数分程観察していれば大方の状況は予想できるようになり、変化に気がつく事ができるようになりました。

僕の場合気がついたところで声援を送り見守るだけなんですが、、、

給餌→はちみつ農家を極めたい

福8堂は、日本蜜蜂のはちみつ農家です。
蜜蜂が野山に咲く花を何万回も巡り集めた花蜜のみを瓶に詰め皆さまに届けたいんです。 

主に蜜蜂に餌を与える理由として
・餌を与える事で群が大きくなる。
・冬の食料不足による餓死を防げる。
餌を与える事で群を増やし巣を大きくすることは、 女王蜂が活発に産卵することで負担になる場合もあり、蜜源とのバランス以上の働き蜂が産まれ、食料を消費するだけで花蜜を集められないといったことも起こる事があります。
人工的な餌を食べた蜜蜂達は本来持つ抵抗力や免疫力が下がり病気になりやすくなったりもするでしょう。
野生の健全な蜜蜂は病気になることや害虫に負けるようなことはほぼありません。
日本蜜蜂は春から秋にかけて集めたはちみつを消費して冬を越し、寒い冬は体を動かし巣内の温度を一定に保つ為、大量のはちみつを消費します。
砂糖水といった人工的な餌を与える必要の無いよう蜜蜂達が冬を越すに十分なはちみつを残すように採取をしていますので、餌を与える必要はありません。

やむを得ず保護した群にははちみつを与える事はあります。

四季の活動

刺されないの?

日本蜜蜂は温厚な生き物ですが、刺激したり怒らせれば刺します。
こちらはチクっとしてその後腫れる程度ですが、蜜蜂は針が内臓と繋がっていますので死んでしまいます。
刺されないように接し、刺させないように防護する事も大切です。